「ヒトラー ~最期の12日間~」は、徹底的に「一人の人間」としてのヒトラーを描いた傑作

「ヒトラー ~最期の12日間~」は、徹底的に「一人の人間」としてのヒトラーを描いた傑作


ナチスドイツが敗北する直前の、ヒトラーの最期の日々の描いた「ヒトラー ~最期の12日間~」。

ナチスを題材にした映画ではアクションやサスペンス色の強い作品が多い中、この作品は「ヒトラー」という一人の人間の内面に徹底的に迫った異色の作風で話題になりました。

第二次世界大戦の歴史に新しい視点をもたらす映画として、まさに「傑作」といえるような重要な作品です。

 

ヒトラーが自殺するまでの最後の日々を描いた作品

「ヒトラー ~最期の12日間~」の舞台になるのは、第二次世界大戦の終結直前、ヒトラー率いるナチスドイツ軍が首都ベルリンの地下壕で最後の抵抗を続けていた日々です。

ソ連軍によってベルリンが包囲され、わずかな部下たちと地下壕にまで追いつめられたヒトラー。

ドイツ軍の各部隊が次々に壊滅し、ベルリンまでもが占領されかけてヒステリーを起こしながら焦る彼の姿は、国際社会の敵として世界を二分するほどの勢いを見せた一国の指導者とは思えない憐れさです。

幹部たちに無茶な命令を拒否されては怒り狂い、ドイツにとどめが刺されていくところを目の当たりにしながら、敗戦が秒読みになると諦めて妻のエヴァとともに自殺する……そんな、意外と知られてこなかったヒトラーの最期の時間がじっくりと描かれます。

 

作品は賛否両論を呼びながらも、ナチスやヒトラーを斬新な視点で描いた作品として世界的に高く評価されました。

また、ヒトラーと高官たちの議論シーンは、動画サイトやナチス題材の映画でパロディに使われていることでも有名です。

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ヒトラーの知られざる一面

「ヒトラー ~最期の12日間~」では、これまであまり知られてこなかったヒトラーの「人間」としての側面が、当時ヒトラーの秘書として実際に地下壕まで付き添っていた女性の証言をもとに描かれます

そこでのヒトラーは、秘書の女性に礼儀正しく接し、食事担当の女性に「美味しかった。ありがとう」と声をかけ、右腕ともいえるゲッペルス宣伝相の子どもたちに「アドルフおじさん」と慕われる、一見するとごく普通の老人として描かれています

元々、個人的に交流のある女性や子どもには優しい性格だったと言われているヒトラーですが、穏やかな姿を目の当たりにすると、彼もあくまでただの「一人の人間」だったんだと感じさせられます。

ヒトラーを「大量虐殺を指導した独裁者」という事実でしか知らない人にとっては、衝撃的な描写ではないでしょうか。

そして、そんなヒトラーが、民族や戦争の話題では狂ったように暴言をまき散らしながら絶え間なく喋り出す様を見ると、別人のような変わりように驚愕させられます。

 

「ヒトラー ~最期の12日間~」が見せた新しい視点

「ヒトラー ~最期の12日間~」は、第二次世界大戦を描いた映像作品の世界に、新しい視点を持ち込んだ革命的な作品と言えるのではないでしょうか。

徹底的にヒトラーを「感情のある一人の人間」として描いたこの作品によって、今までその虐殺行為や独裁的な戦争指揮などの「罪」しか知られてこなかったヒトラーの実像が、広く注目されることになりました。

彼も周囲に慈しみの言葉をかける一人の人間だったことを知り、そんな人物がどうして歴史的な悲劇を指導する大罪人になってしまったのかを考えていくことは、同じ悲劇をくり返さないために一番必要な過程ではないでしょうか。

そして、ユダヤ人虐殺や第二次世界大戦を「一人の極悪人が引き起こした出来事」ではなく、様々な要因が重なって起きた悲劇として考えていくことが、本当の平和につながっていくように思えます。

「ヒトラー ~最期の12日間~」は、ヒトラーという一人の政治家だけでなく、歴史そのものに新しい視点をもたらしてくれる映画でした。

 

最後に

第二次世界大戦をこれまでになかった視点から描いた「ヒトラー ~最期の12日間~」。

「ヒトラーを好意的に描いている」といった批判も巻き起こりましたが、これまでほとんど知られていなかったヒトラーの側面を描いたこの作品は、歴史的に大きな意味のある映画ではないでしょうか。

より深く、多角的に歴史を知るためにも、一度は観る価値のある戦争ヒューマンドラマの名作です。

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