【批評】「オーシャンズ8」はシリーズの本質を完全再現した”リブート映画”の正解例

【批評】「オーシャンズ8」はシリーズの本質を完全再現した”リブート映画”の正解例


豪華キャストによるスマートな盗みを描く「オーシャンズ11」から始まる3部作は、ハリウッドの中でも唯一無二の魅力を持ったシリーズとして人気を集めてきました。

その記念すべき1作目「オーシャンズ11」のリブート作である「オーシャンズ8」は、シリーズの主人公ダニー・オーシャンの妹を主人公に据えた、まさに「女性版オーシャンズ11」と言える内容です。

世界的にも人気を集めたこの作品のヒットの秘訣は「シリーズの本質を完全再現した」点にあるように思えます。

「オーシャンズ11」の魅力の本質は何だったのか

集結・計画・実行の鮮やかな流れ

人気作品のリブートでは、特にその作品のファンから厳しい目が向けられます。

リブート作品が評価される上で最重要のポイントが、「リブート元の作品の本質的な魅力(キャラクターであったり世界観であったり)がちゃんと再現・継承されているか」という点でしょう。

では、「オーシャンズ11」の魅力の本質は何か、を考えると、それは「鮮やかでテンポのいいストーリー」ではないでしょうか。

序盤に仲間たちが集結するシーンから流れるように物語が展開され、盗みの計画が徐々に固まっていく流れは、まるでパズルのピースがかっちりとはまっていくような爽快感があります。

そして見せ場となる盗みのシーンはほどよい刺激に満ちていて、「さらっと観られるミッション:インポッシブル」とでも言うべき軽快なスリルがあります。

このスタイリッシュな演出と脚本こそが、「オーシャンズ11」を名作たらしめる本質でしょう。

人間描写はあくまであっさりと

「オーシャンズ11」の魅力のもうひとつの本質として「あっさりとシンプルな人間描写」が挙げられます。

これは「人間描写が薄い」というわけではなく、「少ない尺と演出でキャラクターそれぞれの性格や内面をしっかりと描き上げている」という意味でのシンプルさと言えるでしょう。

多くを語らず、しかしちゃんとドラマも感じさせるのが「スマートな大人の男たちの物語」という「オーシャンズ11」の側面を体現しています。

「オーシャンズ8」はシリーズの本質をより濃縮

テンポのいいストーリーは健在

「オーシャンズ8」のストーリーは、開幕から元祖「オーシャンズ11」のテンポのよさを感じさせてくれます。

主人公デビー・オーシャンが鮮やかな手口で高級ブランドの服や化粧品を手に入れていく様は「盗み」という悪い行為でありながら美しく痛快で、仲間たちとの合流、実在のファッションイベント「メットガラ」で盗みを決行するという大胆すぎる計画、その実行後の立ち回りに至るまでストーリーのあらゆる時点で驚きが感じられて、冗長な弛みがまったくありません

「オーシャンズ11」の本質をしっかりと受け継いでいるのが分かります。

人数が絞られたことでキャラクターがより際立つ

登場人物たちの個性に関しては、元祖「オーシャンズ11」の魅力がさらに濃くなっていると言えるでしょう。

タイトルにもあるように主な登場人物は8人に絞られていて、だからこそ1人1人の魅力がより感じられるようになっています。

演じたキャストも主演のサンドラ・ブロックをはじめ、ケイト・ブランシェット、ヘレナ・ボナム=カーター、リアーナ、さらにはアン・ハサウェイと、まさにハリウッドを代表する名女優が集結。

「豪華キャストが演じる強烈なキャラクターたちの群像劇」という本質がさらに際立って輝いているのが印象的です。

最後に

名作映画のリブートは「新要素」や「大胆なアレンジ」が仇となって失敗することも多い中で、「オーシャンズ8」はリブート元の本質的な魅力を押さえ、むしろより濃縮させたことで成功しました。

出演者や監督・脚本を手がけたゲイリー・ロスの本家への熱いリスペクトがあったからこそ、懐かしくも新しい「オーシャンズ」シリーズの新作が生まれたと言えるでしょう。

大好評を受けて続編の可能性も期待されるということで、今後のさらなる続報にも注目したいですね。