【批評】「96時間」の続編はどうして駄作になってしまったのか

96時間


演技派俳優のリーアム・ニーソンを主演に、人身売買組織に拉致された娘を助けるためにたった一人で裏社会に戦いを挑む元CIA捜査官の活躍を描いた「96時間」。

低予算アクション映画ながら、スピーディーで痛快なストーリーとスタイリッシュなアクションが話題になり、世界的にスマッシュヒットを記録しました。

そんな大ヒットを受けて3作目まで続編も製作された「96時間」シリーズですが、その評価は作品を重ねるごとに低くなっています。

筆者個人から見ても、続編2作は1作目「96時間」と比べて、明らかに魅力が落ちていると言わざるを得ません。

そこで、今回はなぜこの「96時間」シリーズの続編たちが駄作という評価を受けてしまったのか、その原因を探っていきます。

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明らかにシリーズ化に向かないストーリー

まず、そもそも「96時間」のストーリーはシリーズ化に向いているとはいえません。

「海外旅行中に娘が人身売買組織に拉致されて、それを助け出す」というストーリーは1度ならあり得るかもしれないリアリティがありますが、その後に「家族皆で海外旅行に行ったら、前作の組織関係者の復讐で家族ごと拉致される」という展開は、少し非現実的です。

リアル路線のアクション映画としてヒットした「96時間」の続編で、リアリティに違和感が生まれてしまったのは、大きなマイナスポイントといえます。

さらに、そこからまた主人公たちが犯罪に巻き込まれる3作目に至っては、「いくらなんでも数年以内に事件に巻き込まれ過ぎ」と思ってしまって、少し冷めてしまいます。

明らかにシリーズ化に向かない作品を商業的な理由で無理やり続けてしまうことで、作品に歪な部分が出てしまう典型例ではないでしょうか。

 

続編で失われた「決定的な要素」

無理につなげたストーリー展開でシナリオ的な緊張感が失われたことに加えて、アクション映画としての「96時間」の魅力まで失われてしまったことも駄作化の要因に思えます。

「96時間」の面白さは、元CIA捜査官という肩書を持つ主人公ブライアンが、娘を拉致した人身売買組織のメンバーをたった一人でなぎ倒していく展開にありました。

スタイリッシュなアクションで次々に敵を倒していくブライアンのかっこよさは、この映画で最も重要な要素です。

加えて、立ちはだかる敵が「罪のない若い女性を誘拐して売り払う人身売買組織」という完全な悪党であることも、ブライアンの容赦ない戦いにスカッとする痛快さを感じさせてくれるポイントでした。

 

ところが、続編の「96時間/リベンジ」では、ブライアン自身も敵に誘拐されて拘束されたりすることで、アクションやストーリーのテンポは落ちることになります。

さらに、3作目「96時間/レクイエム」では、殺人の容疑者にされたブライアンが警察に追われる展開がメインになることで、「悪党を問答無用で倒す」という爽快感が完全に失われています。

続編でアクションの痛快さが大幅になくなったのは、「96時間」シリーズとしての面白さが失われることになった決定的な要因ではないでしょうか。

 

キャラクターを軽視した無理やりなストーリー作り

続編2作でも特に評価の低い3作目「96時間/レクイエム」では、ストーリーを成り立たせるために、それまでの登場キャラクターを軽視しているのも大きな問題点です。

主人公ブライアンの元妻で、ブライアンの娘キムの実の母親でもあるレノーアは、メインキャストの一人として、特に重要人物でした。

ところが、3作目ではそんなレノーアが、「殺害」されてしまいます。

1、2作目で描かれた「ブライアンとレノーア、キムが絆を取り戻していくストーリー」を全てぶち壊しにするこの展開は、ストーリーに無理やり事件性を作るためにキャラクターを軽視していると言わざるを得ません。

さらに、レノーアの再婚相手であるスチュワートが、何の説明もなく1作目と3作目で全く別の俳優になっているのも、説明不足で作品の世界観を壊す行為に思えます。

 

最後に

2作目「96時間/リベンジ」も3作目「96時間/レクイエム」も、その作品単体で見れば、安っぽくなく、見どころのある佳作アクションサスペンス映画に仕上がっています。

ですが、「96時間」の続編として見ると、1作目の良さを次第にそぎ落として形だけ保っている作品になってしまったように思えます。

批評家からの酷評、主演のリーアム・ニーソン自身の「さらなる続編が実現するとは思えない」という発言などからも、このシリーズはここで打ち止めのようです。

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