2016年に公開されたアカデミーノミネート作品、『ララランド』。アカデミー賞のハプニングは話題になりましたね。
さらに、ミュージカル形式と甘酸っぱくも儚い物語が好評となり、大ヒットを記録したのはまだ記憶に新しいかと思います。
色彩豊かな画面構成、観客をひきつける魅力的な音楽、さらに誰もが楽しめる物語の融合は、さすがアカデミー賞最有力候補と言われただけあります。
今回は、この『ララランド』の魅力について紹介していきたいと思います。
誰かに感情移入できる分かりやすい物語が魅力
『ララランド』の魅力のひとつは、分かりやすくて捻りのない王道の物語にあると思います。
主人公は女優の卵のミアと、ジャズピアニストのセブの二人。この二人をめぐる物語が、冬から秋にかけて描かれていきます。
ミアはハリウッド女優を目指して、オーディションを受けるも落ち続けており、セブもまた街角のレストランなどで演奏するしがないジャズピアニスト。
夢を追いつつも、年齢的にも経済的にも追い詰められている二人が出会い、恋に落ちていく物語です。
そんな二人が、お互いの夢を応援しながら成長し、そして夢のためにすれ違い、別れを迎えるという、ある種の王道ストーリー展開となっています。
王道だからこそ、ミアとセブの恋の始まりや、すれ違いの悲しさ、そして二人の選択はリアルでもあるのです。
また、ミアがなりふり構わずに夢を追い続ける姿も、フィクションでありながらリアルな切実さと共に描かれています。
恋をしている人、失恋をしたことのある人、恋をしたい人、夢を追っている人、夢に敗れた人など、いろんな角度から見ても感動できる展開。
王道の物語でありながら誰もが経験するであろう人間の成長とそれに伴う喪失が描かれており、多くの人が感情移入できるようになっているのです。
シーンの随所で目を惹く色鮮やかな画面構成
『ララランド』を見たことがない人でも、黄色いドレスを着たミアとスーツ姿のセブが踊っているシーンは一度は見たことがあるのではないでしょうか。
このシーンではバッグの空の色のグラデーションと、舞台の薄暗さに反比例して、ミアの黄色いドレスがかなり印象的な色合いとなっています。
こうした、色彩豊かでパッと華やかな画面構成は、他のシーンでも随所に出てきます。
たとえば、冒頭の渋滞のシーンでは、車も色合い豊かに並べられ、その車の上で踊る人たちの衣装も鮮やかなものとなってます。
他にも、キャストの衣装や舞台の色彩、照明などがシーンによって効果的に切り替えられています。
暗いシーンでは落ち着いた色合いでまとめられ、キャストの気持ちが盛り上がる場面では鮮やかな色合いが使われるなど、シーンごとの画面構成の違いを注意深く見てみるのも本作の楽しみ方のひとつです。
最大の魅力は歌とダンス
この映画の製作者であるデミアン・チャゼルは、元ドラム演奏者でもあり、熱狂的なミュージカル映画ファンとも知られています。
映画界から遠いドラム演奏者という世界にいた彼が、ずっと製作したかった映画がこの『ララランド』だったのです。
そんな彼が満を持して発表したこの映画の最大の魅力は、やはり歌とダンスでしょう。
王道のストーリーに、厚みをもたせ、見るものに切迫感すら覚えさせるのは、この歌とダンスがなければありえません。
耳に残りやすく華やかさと美しさに加え、少しの切なさを滲ませた楽曲はアカデミーで楽曲賞を受賞したほど。
キャストの心のこもった歌声に少したどたどしさも感じるセブのピアノの音色など、ひとつひとつの音にも物語があるものとなっています。
最後に
世界的に高い評価を得た『ララランド』。この作品を見ずにいるのはもったいない!と思わせてくれる作品です。
すっきりとしたストーリー展開や美しい音楽や映像もさることながら、二人の一瞬の恋の儚さや、夢の美しさと喪失の悲しさなど、魅力は随所にあふれています。
鑑賞後は、明日をしっかり生きていこうと思えるような力強さも感じさせてくれる作品ではないかと思います。