実際の事件を題材にした、ノンフィクションのサスペンス映画。
そこには実話だからこそのリアルな緊張感や一見すると実話とは思えない衝撃的なストーリーがあり、観る人を驚かせ、楽しませてくれます。
ノンフィクションサスペンス映画の数々から、特におすすめの良作を紹介していきます。
アカデミー賞も受賞した衝撃の救出作戦『アルゴ』(2012)
イラン革命の中でイラン国内に取り残されたアメリカ大使館員たちを救出するために、CIAが実行した驚きの作戦を描くサスペンス映画。
主演・監督を務めたのはベン・アフレックで、第85回アカデミー賞の作品賞を受賞するなど大きな話題を集めました。
「架空の映画ロケ企画を立ち上げて世界をだましていく」という大胆過ぎる計画の展開や、「イラン政府側に見つかったら終わり」という絶え間ない緊張感の中でのサバイバルは、実話ながらドラマチックなスリルを感じさせてくれます。
アメリカ人種問題の闇を炙り出す『デトロイト』(2017)
1967年のデトロイト暴動の中で起こった「アルジェ・モーテル事件」を、オスカー監督のキャスリン・ビグローが映画化した作品。
白人警官による拷問まがいの取り調べで3人の黒人男性が死亡した凄惨な事件が、生々しく不穏なサスペンスヒューマンドラマとして描かれています。
法的には人種の平等が認められながらも社会的にはまだまだ格差が大きかった時代で、当時のアメリカの闇を感じさせる社会派な作品です。
今も未解決の不気味な事件を描く『ゾディアック』(2007)
1960年代から1970年代にかけてアメリカで発生した連続殺人事件「ゾディアック事件」を映画化したクライムサスペンス。
事件の謎を追うジャーナリストや刑事を、ロバート・ダウニー・Jrやマーク・ラファロ、 ジェイク・ジレンホールといった演技派俳優たちが演じました。
「謎めいた犯行声明を掲げながら事件をくり返すサイコキラー」という存在が実話とは思えないインパクトを見せていて、今も事件が未解決のまま、という事実も不気味さを引き立てます。
シャーリーズ・セロンの怪演が光る『モンスター』(2003)
実在した連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスの生涯を描いたサスペンスヒューマンドラマ。
不幸な生い立ちから追いつめられて罪を重ねていくアイリーンの人生が生々しく描写されて、サスペンスとしてのグロテスクさと、ドラマとしての悲しさを感じさせる作品です。
それまで「美人なハリウッドスター」というイメージだったシャーリーズ・セロンがあえて美貌を崩してアイリーンを怪演し、鬼気迫る演技によってアカデミー賞主演女優賞を受賞。
それまでの「美人女優」のキャラから一転して、幅広い役柄をこなす演技派として知られるようになりました。
「立場」が生み出す人間の狂気『es[エス]』(2001)
アメリカで行われた心理実験「スタンフォード監獄実験」を題材にしたドイツ映画。
閉鎖空間で実験の参加者たちを「看守役」「囚人役」に分けて生活させる……という心理実験の中で、自身の「立場」に飲まれていく参加者たちの暴走が描かれます。
最初は囚人役に友好的だった看守役たちが次第に横暴な命令口調になり、最後には暴力をふりかざしていく姿から人間の狂気が感じられるショッキングな作品です。
人間の心理的な脆さを生々しく描く問題作『コンプライアンス 服従の心理』(2012)
あるファストフード店にかけられた警察を名乗るいたずら電話をきっかけに、「警察への捜査協力」という名目で店の責任者たちが女性従業員に凄惨な暴行をはたらいていく様を描くサスペンス映画。
2004年にアメリカのマクドナルドで起こった実在の事件がもとになっており、あまりにも衝撃的なストーリーや描写の数々が反響を呼びました。
「警察の指示だから」という心理に取りつかれたごく普通の人々が目を覆いたくなるような行為を平然と続ける姿に、人間の判断力の脆さを感じさせられます。
トム・ハンクスが海賊事件の被害者を熱演『キャプテン・フィリップス』(2013)
アメリカの貨物船がソマリア海賊に乗っ取られ、船長が人質として拉致された「マースク・アラバマ号乗っ取り事件」を描いた海洋サスペンス映画。
非武装の無防備な貨物船に武装海賊たちが迫ってくる恐ろしさ、船を占拠されてからの緊張感あふれるやり取りが見どころで、実話ながら王道サスペンスとして惹き込まれます。
主人公のフィリップス船長を熱演したトム・ハンクスにも注目です。
「海のど真ん中に置き去り」という恐怖をじっとり描く『オープン・ウォーター』(2003)
スキューバダイビング中に手違いからボートに置いていかれ、沖のど真ん中に置き去りにされた夫婦のサバイバルと衝撃的な結末を描くサスペンススリラー映画。
基になった事件は「ダイビング中に夫婦が置き去られたことが2日後になって発覚し、大規模な捜索が行われるも2人は発見できなかった」というショッキングなものです。
逃げ場のない状況で体力を奪われていき、さらにサメも現れて……という絶望的すぎるシチュエーションが、じっとりと汗ばむような恐怖を感じさせます。
ビンラディン暗殺の裏側をスリリングに見せる『ゼロ・ダ−ク・サーティ』(2012)
アルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディンの暗殺作戦と、その裏で活躍したCIA捜査官の活躍を描くアクションサスペンス。
映画としてのスリルや迫力はもちろん、知られざる極秘作戦の裏側がかいま見える衝撃作としても話題を集め、政治的なメッセージ性を含め大きな論争を巻き起こしました。
アカデミー賞にも多数ノミネートされるなど、高評価を集めた作品です。
フェイスブック創設の裏に秘められた確執と争い『ソーシャル・ネットワーク』(2010)
Facebookの創設者でIT富豪のマーク・ザッカーバーグの半生を描くヒューマンドラマ映画。
ザッカーバーグの伝記的な要素が強い作品ですが、Facebook発展の裏にある創設者たちの争い、そこから発展した訴訟など、サスペンス面でも大きな見ごたえがあります。
現代社会で大きな影響力を持つSNSの裏側や、世界的な重要人物になったザッカーバーグのさまざまな表情を知ることができる作品です。
最後に
映画としてのエンタメ性はもちろん、「映画のような衝撃的な出来事が本当に起こった」という驚きも、ノンフィクションサスペンス映画の面白さのひとつです。
思わず声を失うショッキングな事件から、世界的な大事件の意外な裏側まで、さまざまな社会の一面を知ることができるノンフィクションサスペンス映画を、ぜひ手に取ってみてください。