【批評】「宇宙戦争(2005)」はもっと評価されるべきSF映画だ

宇宙戦争


2005年にスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で公開されたSF映画「宇宙戦争」。

エイリアンによる地球侵略を一人の市民の視点で描いたこの作品は、エンタメ作品として高い評価を受けた一方で、SF映画としてはストーリーなどに批判もあり、賛否両論の作品となりました。

総合的な評価はイマイチとなっているこの作品ですが、そんな「宇宙戦争」の、”もっと評価されるべき”と思える部分をピックアップしていきます。

 

「家族」の視点で地球侵略を捉えたストーリー

エイリアンが地球侵略をするSF映画といえば、対応に追われる政府や立ち向かう軍隊などの視点でストーリーが進むことが多いのではないでしょうか。

ですが、この「宇宙戦争」では、トム・クルーズ演じる主人公レイと、レイチェル(ダコタ・ファニング)とロビー(ジャスティン・チャットウィン)という、彼の2人の子どもたちの視点でストーリーが描かれます。

事態を上から見下ろす視点ではなく、エイリアンの侵略兵器の足元で逃げ惑う市民の視点で戦いが描かれることで、「地球侵略」という非日常の出来事が、まるで大災害のようなリアルで恐ろしい雰囲気を帯びています。

臨場感たっぷりに描かれるパニック、そして、「人類を救う」でも「エイリアンを倒す」でもなく、「子どもたちを守る」という誰もが共感できる戦いがストーリーの主軸となることで、SF的な世界観が、感情移入しやすい家族の物語に仕上がっていると言えます。

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独特の色味と質感がある映像

「宇宙戦争」の監督を務めたのは、世界的に有名な映画監督スティーブン・スピルバーグです。

日本でも名前を知らない人はいないスピルバーグですが、この「宇宙戦争」では、独特の色味と質感を持った映像世界を見せてくれます。

 

あえて背景をくっきりと見せなかったり、少しフィルターをかけたような色合いが続いたりすることで、はっきりしていて綺麗だけどベタっとした映像とは違った、どこか非日常的な「味」が生まれています。

エイリアンたちの巨大侵略兵器「トライポッド」も、そんな独特の映像の中にたたずむことで、得体の知れない不気味さをより増しています。

地球侵略で起きる一連のパニックも、まるで白昼の悪夢を見ているようです。

 

古典SFの名作に現代ならではのアレンジを加えた展開

「宇宙戦争」で一番の議論の的になっているのが、「人類が手も足も出なかったエイリアンたちが、意外な弱点がきっかけで自滅していく」というストーリーです。

突然訪れるあっけない侵略の結末は、「そんな終わり方で納得できるか!」という批判も巻き起こしました。

 

あまり知られていませんが、この結末は、映画の原作であるH・G・ウェルズの「宇宙戦争」に忠実なものとなっています。

1898年に発表されたこの小説では、火星から侵略に来た宇宙人と人類の壮絶な戦いが一人の男の視点から描かれました。

発表から100年以上が経った今でも、SFの古典的な名作のひとつとして知られています。

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そんなウェルズの「宇宙戦争」で描かれたエイリアンたちの末路を、スピルバーグの「宇宙戦争」はほぼそのままなぞっています。

21世紀の現代ではやや違和感も残るオチですが、原作に最大のリスペクトを払った結末といえます。

 

他にも、ある日突然街中に宇宙人が現れる始まり、主人公が他の生存者と出会うも対立することになる中盤の展開など、原作のストーリーや雰囲気へのオマージュが散りばめられています。

名作小説「宇宙戦争」の映像化としては、もっと高評価を受けてもいい作品ではないでしょうか。

原作の再現度という点では、名作映画として知られる1953年の「宇宙戦争」よりも優れた作品といえるかもしれません。

 

また、ただそのまま原作に忠実なだけでなく、トライポッドが現代兵器を弾くバリアを装備していたり、コンピューターなどの電子機器を破壊する攻撃をくり出してきたりと、21世紀に合わせた設定にアレンジが加えられているのもポイントです。

 

最後に

スピルバーグ監督作の中でもかなり評価が分かれる作品となった「宇宙戦争」ですが、SF史に残る名作小説の映像化作品としては、間違いなく傑作です。

さすがはエンタメ映画の巨匠スピルバーグだ」と言えます。

エイリアンものとしては独特なストーリー、そして現代のSF作品としては若干の違和感も残る結末です。

しかし、それでも原作へのリスペクトとエンタメ作品としての盛り上がりを両立したこの作品は、もっと評価されるべきではないでしょうか。

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