映画の歴史を変えた傑作「ジュラシック・パーク」から「ジュラシック・ワールド」へ、その世界観の歴史は脈々と受け継がれてきました。
登場人物もストーリーも移り変わっていく中で、変わることなく世界観の中心的な存在となってきたのが「恐竜たちの国」そのものであるイスラ・ヌブラル島です。
そんなイスラ・ヌブラル島の崩壊を描いた「ジュラシック・ワールド/炎の王国」は、シリーズのファンにとってはショッキングな作品であるとともに、これまでの世界観に別れを告げて新たな「ワールド」に旅立つ重要な転換点だったように思えます。
”恐竜たちの国”の終わり
イスラ・ヌブラル島が消える、というショック
イスラ・ヌブラル島は1作目「ジュラシック・パーク」からの懐かしの舞台であるとともに、「そこにないものをCGで描く」という試みが本格的に映画に取り入れられた初の舞台であり、映画史においても重要な世界でもあります。
そんなイスラ・ヌブラル島が火山噴火によって沈んでいく、というのは、シリーズの歴史・映画の歴史を知る側からすると相当にショックを受ける描写ではないでしょうか。
これまでこの島では多くのストーリー・サバイバルがくり広げられてきましたが、基本的にそれらは「人間が勝手に行動したこと」であり、人間の目論見と関係なく恐竜たちはこの島でのびのびと暮らし、栄えてきました。
そんなイスラ・ヌブラル島そのものがなくなる、というのは、これまで「ジュラシック」シリーズの世界観を支えてきた”恐竜たちの国”自体が消え去るということです。
これ以上にショッキングな展開はないと言えるのではないでしょうか。
「ブラキオサウルスの死」が象徴するもの
イスラ・ヌブラル島崩壊のシーンで特にショッキングなのが、「ブラキオサウルスの死」のシーンでしょう。
島からできる限りの恐竜を確保して脱出させるよう依頼を受けた傭兵チームが恐竜たちを捕らえ、船に積んで逃げる中で、20m以上もの巨体を持つ首長竜のブラキオサウルスは船に乗ることができず、やむを得ず見捨てられます。
悲愴な鳴き声をあげながら火砕流に飲まれていくこのブラキオサウルスは、1作目「ジュラシック・パーク」でグラント博士たちがはじめて目撃したブラキオサウルスと同じ個体でした。
つまり彼は、「本物と見間違うほどリアルなCGキャラクター」として映画の世界に初めて登場した存在です。
映画の歴史を変えたワンシーンの主役だった彼が、イスラ・ヌブラル島での長い生涯を終えて死んでいくこの場面は、単なる「恐竜の死亡シーン」以上の意味合いを持つのではないでしょうか。
映画史を変えた名作シリーズが、これまでの舞台に別れを告げる象徴的なシーンだと言えます。
衝撃的なストーリー展開
「ロストワールド」へのオマージュも込めて人間の愚かさを描く
イスラ・ヌブラル島崩壊後のストーリーも、これまで以上に「自身の都合で恐竜たちを弄ぶ人間」の浅ましさが表れていて衝撃的です。
その中でも「恐竜を人間の都合で捕らえて連れ出す」「恐竜をオークションにかけて高値で売りさばく」といった行為は、元祖シリーズ2作目「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」へのオマージュが込められているように思えます。
本作は「ジュラシック・ワールド」タイトルの2作目ということで、元祖「ジュラシック・パーク」シリーズの流れを汲んでいるのかもしれませんね。
本作のゲスト的な人工恐竜「インドラプトル」の暴れっぷりも、ラプトルに焦点が当てられた「ロストワールド~」を彷彿とさせます。
「ジュラシック・ワールド」の本当の意味
「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のテーマをずばり挙げるとすれば「イスラ・ヌブラル島との別れ」そして「恐竜と世界の出会い」でしょう。
本作の最後には「恐竜たちが人間社会の中に解き放たれる」という衝撃な結末が描かれます。
これは「恐竜たちが故郷の島を出て世界(ワールド)へと羽ばたいていく」ことを示している、という声も多く、ジェフ・ゴールドブラム演じる数学者マルコム(1作目「ジュラシック・パーク」からの登場人物です)が「真のジュラシック・ワールドにようこそ」と締める結末も、それを言い当てています。
本当の意味での「ジュラシック・ワールド」は、この「炎の王国」から始まるのかもしれません。
最後に
これまでの舞台だったイスラ・ヌブラル島が消え、恐竜たちがついに世界に羽ばたいていくという、衝撃的な展開が盛りだくさんの「ジュラシック・ワールド/炎の王国」。
ブラキオサウルスの死というカタルシスを感じさせる描写もあり、単に「ジュラシック・ワールドシリーズの2作目」という以上に大きな意味合いを持った作品です。
ここからシリーズがどう展開し、恐竜たちがどんな運命をたどるのか、さらに期待が高まります。