ニコラス・ケイジとショーン・コネリーというハリウッドスターのW主演で、「FBI捜査官と謎の男」の共闘を描いたアクション映画「ザ・ロック」。
公開は1996年で、すでに20年以上前の作品ですが、今観ても全く色あせない面白さがあります。
「ザ・ロック」がなぜアクション映画史に残る名作なのか、その理由は大きく2つあります。
1990年代ハリウッドアクションの大傑作
「アルカトラズ×クライムアクション」の魅力
「ザ・ロック」のストーリーは、「化学兵器を盗み出したテロリスト集団が人質を取ってアルカトラズに立てこもるなか、科学専門のFBI捜査官とかつてアルカトラズからの脱獄を果たした謎の男、そして米軍特殊部隊が事態解決のために潜入する」というもの。
この「アルカトラズ×本格クライムアクション」という設定が、まずアクション映画ファンの心を掴みます。
また、監督を務めたのが、ハリウッドで「破壊王」と呼ばれるマイケル・ベイなのも大きな魅力です。
この2年後には「アルマゲドン」で、そして21世紀に入ってからは「トランスフォーマー」シリーズで知られることになる、ハリウッド大作アクションの帝王としての手腕はこの頃から健在。
シチュエーションを最大限に活かした、極上のエンタメアクションを見せてくれます。
序盤から容赦なしのインパクトで観客を惹きこむ
「ザ・ロック」のアクション描写やストーリー演出は、最初から最後まで全く隙がありません。
まず、テロリストたちが化学兵器を奪うオープニングでは、無残な死をもたらす化学兵器のおそろしさをまざまざと見せつけます。
そして、前半はニコラス・ケイジ演じる主人公スタンリーと、ショーン・コネリー演じる元SAS諜報員ジョンのバックグラウンドを見せるパート。
この時点でおよそ130分の尺のうち半分を使いますが、白昼のサンフランシスコでのド派手すぎるカーチェイスなど、アルカトラズへの潜入前からアクションは始まっていると言わんばかりの勢いを見せます。
アルカトラズに潜入してからは言うまでもなく、銃撃戦と爆発の嵐。
テロリスト集団に対するスタンリーとジョンのバリエーション豊かな攻撃、タイムリミットの迫るハラハラの展開、戦いを通してたくましくなっていくスタンリーの成長など、見どころに欠きません。
映画のそれぞれの段階でしっかりと見せ場を作り、全体を通しても盛り上がりを見せることで、観ているこちらはノンストップで楽しめます。
圧倒的な「キャラクター」の魅力
全盛期のニコラス・ケイジと魅力全開のショーン・コネリー
エンタメアクション映画では、アクションシーンだけでなく「キャラクター」も重要です。
個性的で魅力あるキャラクターがいてこそ、明快なストーリーやド派手なアクションは活きてきます。
その点でも、「ザ・ロック」は完璧と言えるでしょう。
まず、ニコラス・ケイジが演じる主人公スタンリー・グッドスピード。
普段はオフィスで科学捜査を行う裏方ということもあって、彼はFBI捜査官という立場ながら、優しくて親しみやすい雰囲気があります。
言い換えれば「頼りない」感じもありますが、そんな彼が戦いを通してどんどんたくましくなり、大切な人を守るために大胆に行動していくのは大きな魅力です。
ハリウッドスターとして人気の絶頂にいた1990年代のニコラス・ケイジの存在感も合わさって、文句なしに「好印象の主人公」です。
一方で、ショーン・コネリーが演じた、もう一人の主人公ともいえるジョン・パトリック・メイソン。
最初から強く、したたかで、そのためどこか近寄りがたい雰囲気もあります。
そんな彼の人間らしさが少しずつ見えてきて、最初はただの「小僧」だとバカにしていたスタンリーを認めていく姿は、ベタながらグッときます。
若きスターのニコラス・ケイジとはまた違った、熟練のベテラン俳優としてのショーン・コネリーの渋い魅力もあって、「将来はこんなおじ様になりたい!」と思わせるかっこよさがあるキャラクターです。
敵役にも確かな個性と魅力がある
アメコミ映画で「ヴィラン」の存在が映画の面白さを左右するように、エンタメアクション映画においては「敵役」の魅力も注目ポイントです。
その点で、「ザ・ロック」のテロリスト集団のリーダー・ハメル准将は、インパクトも魅力も圧倒的でしょう。
演じたのは、ショーン・コネリーに負けず劣らずのベテラン俳優エド・ハリス。
化学兵器でサンフランシスコを狙うテロリストながら、その内には「国に消耗品のように使い捨てられた部下たちが報われるように」という何より人間らしい感情が秘められていて、「同情・共感させてくる敵」という難しい役どころを見事に表現しています。
その存在感は、主人公2人に匹敵します。
最後に
シンプルでテンポのいいストーリー、熱い演出と派手なアクション、そして記憶に残る魅力的なキャラクター。
それぞれの要素が全てハイクオリティに高められているからこそ、「ザ・ロック」は全方位で隙のない極上のエンタメ作品に仕上がっています。
この普遍的な面白さは、たとえこれから何十年経っても色あせないものでしょう。