中国映画界は「第2のハリウッド」になり得るか

中国映画界は「第2のハリウッド」になり得るか


今や日本をGDPで抜いて、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国となった「中国」。

その勢いは映画界にも表れていて、世界の映画市場でぐんぐんと存在感を高めています。

では、そんな中国映画界もまた、アメリカに次ぐ「第2のハリウッド」になっていくのでしょうか。

中国映画シーンの立ち回りや方向性を見ながら、その先行きを考察してみましょう。

ハリウッドで存在感を増す「中国」

話題の大作の舞台として続々登場

近年のハリウッドで、「中国」の存在が増し続けています。

例えば、「トランスフォーマー/ロストエイジ」や「MEG ザ・モンスター」、「インデペンデンスデイ:リサージェンス」、「ロボコップ」などの大作では中国企業がピックアップされたり、中国そのものが舞台になるなど「中国推し」が顕著に。

さらに、万里の長城を舞台にしてマット・デイモンを主演に迎えた「ハリウッドによる中国ファンタジー」として、「グレートウォール」といった作品も生まれました。

また、映画の出資会社としても中国企業のロゴが上がることも多く、ハリウッドと中国の関係性は切っても切り離せないものと言えるでしょう。

その背景としては、市場としての中国の大きさ、また経済的に躍進を続ける中国の「スポンサー」としての大切さが「大人の事情」として確実に影響しています。

世界の情勢をダイレクトに表してきたハリウッド映画

そもそも、ハリウッド映画は昔から世界の情勢をダイレクトに表してきたことで知られています。

今でこそ中国がその座についている「経済大国」というポジションは一昔前は日本のもので、多くのハリウッド映画で日本企業が存在感を持っていました。

また、世界の平和を脅かす「敵」として昔はよくロシアや東欧などの共産圏が登場しましたが、冷戦が終わって久しい今では中東や北朝鮮などが主な敵になり、エイリアンなど国際社会を刺激しない「都合のいい敵役」が登場するミリタリー作品も多くなっています。

ある意味で「中立の立場で常に世相を表す」のがハリウッドの姿勢と言えるのではないでしょうか。

中国映画界の圧倒的躍進

ハリウッド顔負けの超大作も展開

ハリウッドで日に日に存在感を増している中国ですが、ここ数年では純粋な「中国映画」のスケールも大きくなり続けています。

例えば、中国軍特殊部隊の活躍を描く戦争映画「オペレーション:レッド・シー」は、ハリウッドの「ブラックホーク・ダウン」などにも負けない凄まじいアクションを見せました。

さらに、次世代中国スターのウー・ジンを主演にフランク・グリロなどの実力派俳優を迎えた「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」もアクションファンの間で話題に。

他にも、興行的には失敗しながらも空前の大作映画として注目された「阿修羅」やNetflix公開の「流転の地球」など、製作規模ではハリウッドにまったく引けを取らない大作が続々と生まれています。

その国際的な評価も上々で、これまで歴史映画や香港映画など一部のジャンルのみが注目されてきたのとは違う、「世界のエンタメ市場で真っ向から勝負できる中国映画」が確立されつつあります。

アジアの映画市場を制覇できるか?

着実に世界で存在感を増している中国映画界は、「第2のハリウッド」になれるのでしょうか?

規模的にはどんどん大きくなっていますが、そこには環境的・文化的な壁がまだまだあるように思えます。

ハリウッド映画がこれほどまでに世界に定着している理由のひとつとして、資本力はもちろん、「世界の映画界から人や技術が集まってくる」という点が挙げられます。

ハリウッドで活躍する俳優や映画監督には、ヨーロッパやアジア、アフリカなど、世界各国の出身者がいますね。

その一方で、「中国に拠点を置く世界的スター」というのは、中国出身の俳優を除くとほぼ皆無です。あくまで「中国の俳優・スタッフによる一国の映画界」の色が強くなっています。

また、中国の国としての形態上、その内容にはどうしても政治的な意向が強く表れます。

「国家のプロパガンダ」としての一面も強い中国の大作映画には、表現の自由が限られるというデメリットがあります。

表現の多様性の低さが、中国映画界のハリウッドに遠く及ばない点でしょう。

また、中国の映画市場が「大きすぎる」という点もデメリットになり得ます。

バブル時代の日本でもお金をかけた超大作が多く生まれましたが、その多くは「贅沢な国内向け映画」の範囲内だったように思えます。

当時の日本と同じく好景気にある中国は、10億人以上の人口を抱える巨大国家。自国と周辺のアジア各国だけで、製作費数十億円の大作を黒字にすることができます。

よって、昔からある程度の市場規模を誇ってきた邦画界と同じように、「自国民向けの作品を作るだけで業界が成り立つ」ことによる映画の「ガラパゴス化」が起きかねない環境があります。

途中から世界の映画市場に参入することを考えると、この点も常に世界を意識し続けるハリウッドと比べるとやや不利と言えるのではないでしょうか。

最後に

どんどん存在感を増す中国映画界ですが、ハリウッドに並び立つ前には、まだまださまざまな壁があります。

他の映画界の視点からあらためて見ていくと、ハリウッドという巨大映画界の凄まじさを実感できますね。

中国映画以外にも、インドや韓国などの映画も世界で盛り上がりを見せている現在。

邦画界も、渡辺謙などをはじめとする日本人俳優や「万引き家族」の是枝監督など、世界から一定の注目を集め続けています。

アジアの映画が今後世界でどのように話題になっていくのか、今後も期待が高まりますね。