2016年に公開された「ムーンライト」はアカデミー賞に8部門ノミネートされ、作品賞を含め3部門を受賞しました。
主人公の青年は黒人でしかもゲイです。
今まで、ハリウッドの作品ではターゲットにならない、マイノリティの世界を描いている映画で話題となりました。
「ムーンライト」は3部構成。それぞれにストーリーがある
「ムーンライト」の脚本はタレル・アルヴィン・マクレイニーが書いています。彼は自分の人生をこの作品の中で描きました。
全てが実話ではないですが、3部構成のうち、1部と2部は彼が送ってきた人生が元になっています。そして、3部目を監督のバリー・ジェンキンスが製作しました。
各構成にはそれぞれタイトルも付いています。
- 1部:リトル
- 2部:シャイン
- 3部:ブラック
となっていて、主人公の青年がそれぞれの時代に呼ばれていた名前です。
また、各時代を別の俳優さんが演じていますが、その俳優さんの変化に驚かされました。
1部、2部では弱々しくいじめられている主人公の青年が、3部ではいきなりマッチョになり全く別人のようになって現れるのです。しかも体型だけでなく性格も変わっていました。
子供の頃はいじめられていた少年が、ドラックの売人に成長しているのです。
実はこの3部目の変化に「ムーンライト」で言いたかったことが込められています。
主人公の青年は本当の自分を隠し、筋肉という自分を守るものをつけ、売人という周りに恐れられる立場になることによって、ゲイである事を誰にも知られないようにしていたのです。
そんな彼が故郷に戻り「本当の自分でいいんだ」と気づくことが、監督や脚本家の伝えたかったことなのです。
「ムーンライト」の美しい映像と青
映画の中で、主人公の青年を助けた男性が言ったセリフに、「月の光の中で黒人の少年はブルーに見えた」という言葉があります。
このセリフが「ムーンライト」の美しい映像全てなのです。
「ムーンライト」に登場する黒人はとても美しく見えます。これは、実は特別な映像技術が使われていて、黒人の肌に青色をかぶせたからです。その加工によって黒人の肌がとても美しく見えるようになっているのです。
特に1番最後に映る少年は男性のセリフのように、月明かりに照らされて本当に彼の肌は青色に見えとても綺麗でした。
この子供の頃の主人公を映し出すことによって、強がって偽りの自分の姿でいた主人公が、本当の自分に戻れたという事を表現しています。
一瞬しか映らないシーンですが、とても印象に残るくらいの美しいシーンなので忘れることができません。
また、黒人の肌だけでなく、月の光や太陽の光などにも色かぶせる技術を加えています。
その技術によって淡い感じや、眩しい感じが強調されて映画自体がとても美しく作られているのです。
最後に
安全な日本に住んでいると、世界で起きている人種差別が遠くに感じることがあります。しかし映画を通して離れた所にいる人達の事を知り、彼らの気持ちを知ることができます。
この「ムーンライト」はそのような事を教えてくれる作品でもあります。