スーパーマーケットの食材たちが人間に戦いを挑む様を描いた問題作、「ソーセージ・パーティー」。
一見すると過激なスプラッターコメディにしか見えないこの作品ですが、じっくり見てみると、そのストーリーにはアメリカ社会が縮図になって詰まっています。
今回は、「ソーセージ・パーティー」が描いたアメリカ社会の問題を読み解いていきましょう。
「ソーセージ・パーティー」のあらすじ
物語の主人公は、アメリカのとあるスーパーマーケットに並ぶ、ソーセージのフランク(セス・ローゲン)。
ホットドッグの女の子ブレンダ(クリステン・ウィグ)と惹かれあっているフランクは、いつか2人でお客さんに買われて、スーパーの外にあるという「楽園」へ行くことを夢見ていました。
ところがある日、フランクはスーパーの外には楽園などなく、自分たちは人間に食べられてしまう運命だということを知ります。
フランクは他の食材たちと協力して、生き残りをかけて人間に勝負を挑みます。
ただの「下品なコメディ映画」ではない?アメリカ社会が詰まったシニカルなストーリー
「人間と食材が命がけで戦う」というショッキングなストーリーや、グロテスクな描写、そしてかなりエグい下ネタなど、あまりに過激な内容からR15+指定になった「ソーセージ・パーティー」。
ところが、そのストーリーは現代のアメリカ社会の風刺がたくさん詰まっていて、ただ下品で不謹慎なだけの作品ではありません。
そんなこの作品を、2つの視点から考察していきます。
●登場キャラクターにみる多民族社会アメリカのかたち
まず、注目したいのが個性豊かな食材のキャラクターたちです。
彼らはよく見ると、様々な民族の人々で構成されるアメリカ社会の縮図になっています。
例えば、フランクと行動を共にするベーグルのサミー(エドワード・ノートン)は、ベーグル好きなユダヤ人を比喩しています。
他にも、中東系のラヴァシュ(デヴィッド・クラムホルツ)、ネイティブ・アメリカン系の火酒(ビル・ヘイダー)、メキシコ系のテレサ・デル・タコ(サルマ・ハエック)、アフリカ系のミスター・グリッツ(クレイグ・ロビンソン)など、それぞれの民族を表す食材が登場します。
どの食材がどの売り場に並んでいるか、誰と誰が仲が良いか・悪いかなど、キャラクターの性格や関係性をじっくり観察してみてください。
そうすると、表向きは「平等」を謳いながらも、まだまだ民族間の偏見や対立が残るアメリカ社会の問題点が、シニカルに描かれているのが分かります。
さらに、テレサ・デル・タコが同性愛者だったりと、近年注目されているLGBTについて言及されているのも注目ポイントです。
●「独立記念日」に込められたアメリカの精神
「ソーセージ・パーティー」のストーリーは、7月3日から4日にかけての出来事になっています。
クライマックスの戦いがくり広げられる7月4日は、アメリカの「独立記念日」という祝日です。
戦争の末にイギリスから独立して作られたアメリカでは、この日は特別な意味をもつ重要な日になっています。
そんな独立記念日に食材たちが蜂起して、まさに人間の支配からの「独立」のために戦う…そんな展開には、独立記念日に込められたアメリカの精神が、皮肉って描かれているように思えませんか?
最後に
一見ただのおバカなコメディ映画に見えて、実はアメリカ社会を表した深いストーリーや物語設定がある「ソーセージ・パーティー」。
今回はその内容を、2つの視点から考察してみました。
過激で不謹慎な描写に大笑いしたあとは、シニカルなストーリーに注目しながらもう一度映画を見直してみると、たくさんの発見がありますよ。
「ソーセージ・パーティー」はこちらでCheck!