アイドル的な人気を身につけた俳優が、その後「所詮アイドル俳優」という評価からなかなか脱却できずに苦労する……そんな話は、日本に限ったことではありません。
世界のエンタメ映画の中心ハリウッドにも、一度「アイドル俳優」というイメージがついたことで悩むスターは多くいます。
あのレオナルド・ディカプリオなどは、その苦悩から見事に脱却した俳優と言えるでしょう。
そして、近年のハリウッドのアイドル俳優たちが「俳優」として再評価されるための登竜門となっているのが、「戦争映画」です。
今回は、容姿やキャラクターの面から注目が集まり、「戦争映画」を経験することで実力派として改めて評価されていった俳優たちを見ていきましょう。
アンドリュー・ガーフィールド:『スパイダーマン』から若手筆頭の演技派へ
「アメイジング・スパイダーマン」シリーズで2代目スパイダーマンを演じたことで、世界的に一気にブレイクしたアンドリュー・ガーフィールド。
スパイダーマンのイメージもあって、どちらかというとその注目は、アイドル的な色合いが強くなっていました。ところが、実は彼はもともと舞台出身で、演技力によって上りつめてきた俳優です。
「アメイジング・スパイダーマン」以前には「ソーシャル・ネットワーク」やカズオ・イシグロ原作の「わたしを離さないで」に出演し、演技賞にも多数ノミネートされていました。
そんな彼が、「スパイダーマンの俳優」というイメージから脱却して大きく注目されたのが、2017年公開の戦争映画「ハクソー・リッジ」でしょう。
太平洋戦争の沖縄戦で敵味方問わず大勢を救った実在の衛生兵を描くこの作品で、アンドリュー・ガーフィールドはアカデミー賞主演男優賞にもノミネートされるなど、国際的な評価を得ました。
それと前後して、難病の男性を描いたヒューマンドラマ「ブレス しあわせの呼吸」や隠れキリシタンの壮絶な苦悩を描く「沈黙 -サイレンス-」などでも主演を務め、もはや「アイドル俳優」という印象からは完全に脱却しています。
今では、ハリウッドの若手筆頭の演技派俳優と言えるでしょう。
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シャイア・ラブーフ:クセの強い個性派としての実力を戦争映画で見せる
「トランスフォーマー」シリーズの初代主人公として、世界的に有名になったシャイア・ラブーフ。映画ファンの中でも、長らく「トランスフォーマーのサム」というイメージが強かったのではないでしょうか。
そんな彼も、クセの強い個性派俳優として確実にキャリアを積みながら、アイドル的な知名度を塗り替えてきました。
彼の「トランスフォーマー」以降のキャリアでも特に有名なのは、ブラッド・ピット主演の戦争映画「フューリー」です。
この作品で「ブラッド・ピット演じる主人公を支える副官」というポジションを演じたラブーフには、もはや「コミカルなお調子者のサム」の面影はまったくありません。
本物の職業軍人にしか見えない彼の迫力は、俳優としての確かな演技力と存在感を感じさせます。
さらに、「退役軍人が直面する困難」を独特のかたちで描いた2015年の作品「マン・ダウン 戦士の約束」も、異色の戦争映画として、彼のキャリアの中で目立っています。
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アーロン・テイラー=ジョンソン:「オタク青年」から「無骨さが魅力の俳優」へ
ひ弱なオタク青年が「コスプレヒーロー」として真の強さを身につけていく「キック・アス」シリーズは、2010年代を代表するアクションコメディとして有名ですね。
そこで主人公デイヴを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンは、映画でのオタクっぽい雰囲気と普段のイケメンな容姿のギャップもあり、若手ハリウッド俳優を代表するアイドルになりました。
そして、2014年のハリウッド版「GODZIILA ゴジラ」でも、優しさと強さを兼ね備えた主人公として人気を集めました。
そんな彼も、最近は演技力で俳優として注目されるようになっています。
2017年公開の戦争映画「ザ・ウォール」は、アーロン・テイラー=ジョンソンのイメージを一新させた一作と言えるでしょう。
土ぼこりにまみれてスナイパーライフルを握り、過酷な戦場で限界まで追いつめられる彼の姿は、「キック・アス」のイメージとは違う、武骨で泥くさい力強さがあります。
さらに、2018年にNetflixで公開された歴史戦争大作「アウトロー・キング スコットランドの英雄」では狂戦士のごとく戦い狂う騎士を演じるなど、たくましい強さは増していくばかりです。
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ブラッドリー・クーパー:「シリアスな演技力」を見せつけて一気に注目される
「ハングオーバー!」シリーズで世界的に有名になった俳優、ブラッドリー・クーパー。
その後「世界にひとつのプレイブック」などで演技力を見せるも、そこには常に「さわやかイケメン俳優」というイメージが定着していました。
そんな彼の印象が一気に変わったのが、クリント・イーストウッド監督によるノンフィクション戦争映画「アメリカン・スナイパー」です。
実在の米軍スナイパー、クリス・カイルの苦悩を描いたこの作品は、過酷な戦場を描く新たな名作戦争映画として話題になりました。
ブラッドリー・クーパーはワイルドな容貌で戦場の中を走っていて、これまでの清潔感のあるイケメンキャラを脱却し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるなど批評的にも高く評価されています。
この作品によって、ただかっこいいだけではないところを見せつけたと言えるでしょう。
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ニコラス・ホルト:「純粋な青年」のイメージを逆手にとった演技で高評価
「X-MEN」シリーズや「ウォーム・ボディーズ」など、軽めのタッチのエンタメ作品に多く出演して、アイドル俳優として人気になったニコラス・ホルト。
「純粋なアメリカ人青年」というステレオタイプを体現したキャラで、同世代から注目を集めてきました。
そんなイメージをうまく活かして彼が存在感を見せたのが、新米兵士が初めての戦場で葛藤していく様を描く「砂の城」です。
親しみやすい等身大のイメージがあるからこそ、そんなニコラス・ホルトが悩み、戦う姿は、戦場のリアルをより生々しく表しています。
Netflixオリジナル映画の注目作ということもあり、彼の新たな方向性を見せた一作と言えるのではないでしょうか。
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最後に
「アイドル俳優」「イケメン俳優」というイメージを脱却した俳優たち、そして彼らの実力を示した戦争映画を紹介していきました。
「戦争」というシリアスなテーマを描いた作品では、出演する俳優の演技力や存在感など、その真価が問われます。
彼らはそんな高いハードルを乗り越えたからこそ、演技派として評価されるようになったのではないでしょうか。
今後も、実力派としての彼らの活躍に注目です。
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