【批評】「イコライザー2」で満たされたものと足りなかったもの

【批評】「イコライザー2」で満たされたものと足りなかったもの


ハリウッドを代表する名優の一人、デンゼル・ワシントン。

彼の近年の代表作として高く評価されているのが、元CIAの寡黙な男が悪に立ち向かう「イコライザー」です。

興行的、批評的に大きな成功を収め、2018年には続編「イコライザー2」が公開。

こちらも高評価を集めましたが、そこには前作の面白さを期待する観客として「満たされたもの」と「足りなかったもの」がそれぞれあるように思えました。

主人公ロバート・マッコールの「説得力」は健在

平凡な生活のなかでうかがえる「ベテラン」の表情

「イコライザー」の最重要の魅力が、デンゼル・ワシントン演じる主人公ロバート・マッコールそのものでしょう。

彼の言動や表情、その裏にある人柄や信念こそが、「イコライザー」という作品の軸を成しています。

そんなロバート・マッコールのキャラクターとしての魅力は、「イコライザー2」でも健在でした。

 

普段は落ち着いていて物静かで、ごく平凡な仕事をして平凡な生活を送る。

しかし、そのなかで時おり見せる鋭い表情や観察眼は、彼がCIAエージェントとして危険な局面を生き延び、死闘を経験してきた「ベテラン」であることをうかがわせます。

まさに「能ある鷹は爪を隠す」を体現した存在です。

そんな「ただ者じゃない」空気をまとっているからこそ、マッコールの言葉のひとつひとつがズシンと来る重さがあり、現実世界の残酷さを知っているからこその圧倒的な説得力が感じられます

「父親」のような表情で若者を導くシーンが見どころ

マッコールの言葉が悪党に突き刺さるだけでなく、悩める若者を優しく厳しく導いていくのも「イコライザー」シリーズの見どころでしょう。

1作目ではクロエ・グレース・モレッツ演じる歌手志望の女性アリーナを救い、裏社会の暗い道に染まりかけていた彼女を明るい道へと送り出しました。

本作ではアパートの隣人の青年マイルズが彼に救われることになり、彼の「絵」の才能を見出したマッコールは、ギャング集団とつるんでいた彼を連れ出して更生させていきます。

マッコールがマイルズに語りかける言葉は一言ひとことが含蓄たっぷりで、その姿はまるで「父親」のようです

デンゼル・ワシントンのさすがの名演も合わさって、アクション映画でありながら重厚なヒューマンドラマとして楽しめるエピソードになっています。

クライムアクションとしての「爽快感」がやや不足

アクションのボリュームは控えめに

悪党たちには説得力のある言葉だけでなく、物理的に鋭い「制裁」を突き刺していくのも、1作目「イコライザー」の魅力でした。

この「アクション」という点において、本作はややボリュームが控えめになっていたように思えます。

1作目では手始めにマフィアたちの持つ店を潰し、その工場を爆破炎上させ、汚職警官をぶちのめし、終盤では傭兵集団をほぼ一人で壊滅させました。

一方で、本作ではオープニングで暴行犯のグループをこらしめた後は、ちょっとしたアクションを挟みつつもクライマックスまで派手な戦いは控えられます。

そのクライマックスも、人数的には「マッコールvsかつて同僚だった悪党4人」というコンパクトなもの。

単純に戦闘の犠牲者数だけがアクションのボリュームの指標になるわけではありませんが、「マッコールがぶちのめす人数」が前作と比べて少ないのは、彼の戦いっぷりも見たかったファンとしてはやや物足りない感が残ります

ヒューマンドラマ面、サスペンス面ではより重厚さが増した一方で、アクション映画としては淡白になったと言わざるを得ません。

「大切な人」が失われるという描写が後を引く

また、1作目と本作の大きな違いとして「マッコールの大切な人が犠牲になる」という重い展開があることが挙げられます。

マッコールのCIA時代の上司で、1作目でも彼をサポートしてくれたスーザン・プラマー。彼女が何者かに殺害されるという悲劇が今回のマッコールの戦いの動機になりますが、最終的にアリーナが救われた1作目と違い、今回はマッコールが戦いに勝った後も「大切な人を守れなかった」という悲しい事実が残ります。

「マッコールが気にかけた若者が救われる」という点ではマイルズは真っ当な道に進んでいくので救いがありますが、1作目から登場しているメインキャラクターが犠牲になる、という重すぎる展開が後を引いてしまいます。

「悪を討ちのめす爽快なアクション映画」という点では、爽快とは言い難い後味の悪さです。

最後に

続編としては上々の評価を得た「イコライザー2」ですが、見ごたえの増した部分もある一方で、派手なアクションやストーリーの爽快感という点ではややパワーダウンした感もあります。

とはいえ、全体的に見ればスリリングに楽しめる良作であることは間違いありません

2作連続のヒットで3作目の可能性もあるそうですが、できることなら1作目のような後味のいい勧善懲悪が描かれることに期待しましょう。