「サメ映画」といえば「ジョーズ」などの名作で知られる一大ジャンルである一方で、最近では「変な低予算作品が乱発されるB級ジャンル」というイメージも持たれてきました。
そんなサメ映画ですが、B級パニック作品が多く生み出される一方で、原点に立ち返って「サメという肉食生物の怖さ」を真面目に追求した作品も再び注目を集めています。
そんな近年の良作サメ映画に共通する「ワンアイデア」の重要性を見ていきましょう。
斬新な「ワンアイデア」で輝き出す2010年代のサメ映画の世界
サメ映画の原点であり頂点であるのが、スティーブン・スピルバーグ監督による名作「ジョーズ」でしょう。
次々に沈んでいく犠牲者、赤く染まる海、スリリングなサメとの攻防…あらゆる要素・演出が観客を刺激する傑作パニック映画です。
しかし、そんな「ジョーズ」に並ぶ正統派サメ映画はなかなか少なく、一方で「サメと何かをかけ合わせたら面白い」という点が注目されてイロモノB級サメ映画が大流行しました。
そんな中、「ジョーズ」のような真面目なサメ映画のテイストに「ワンアイデア」を加えることで、名作に匹敵する面白いサメ映画が作れる、という方程式が確立されつつあります。
ワンシチュエーションが生むスリルを絶賛された「ロスト・バケーション」
近年のサメ映画の中でも最も高評価を集めたのが、2016年公開の「ロスト・バケーション」でしょう。
この作品の内容はシンプルで、「主人公の女性サーファーがサメに襲われる」というもの。
しかし、そこに「怪我を負った主人公が沖合の岩場に避難するも、逃げ場も助けもなし。さらに満潮が迫って岩場が沈んでいく」というワンアイデアが加わることで、シチュエーションスリラー的なスリルも生まれています。
極限状況がさまざまなトラブルを生んで、サメの出番が少ない低予算映画でもハラハラドキドキを感じさせる手法は「ジョーズ」の演出と共通するものがあります。
さらに、そのサメの登場シーンもここぞという場面でインパクトを生んでいて、安っぽさは微塵もありません。
ワンアイデアで奇抜さを見せるのではなく「王道のサメ映画の魅力」をより高めているからこそ、「ロスト・バケーション」は新時代の傑作サメ映画として世界から絶賛されました。
今話題のレジャーをテーマにリアルな恐怖を見せた「海底47m」
「海底47m」は、スリリングな海洋レジャーとして最近人気を集める「ケージ・ダイビング(鋼鉄製の檻に入ってサメなどを間近で眺めるダイビング)」が題材のパニック映画です。
ケージ・ダイビング中に、もし檻を吊るすケーブルが切れて海底に落とされてしまったら……という恐怖を描くこの作品は、「残り少ない酸素×外にはサメの群れ」という最悪の組み合わせが息の詰まるストーリーを作り出しています。
この作品でも「檻の中で海底に沈められる」というワンアイデアが、サメの肉食生物としての現実的な恐怖をより際立たせる方向で使われています。
「危険だと分かっていてサメの群れの中に出ていかなければならない」という斬新なストーリー展開は、新時代のサメ映画として一見の価値ありです。
説得力のある展開で新感覚のパニックを描く「パニック・マーケット」
「サメ」の生き物としての恐さにスポットを当てつつ斬新なワンアイデアを盛り込む、という手法を2010年代初めに確立したのが、「パニック・マーケット」です。
そのストーリーは「津波で浸水した海辺の街のスーパーマーケットに海水と一緒にサメが入り込み、客や店員たちを襲う」というもの。
あらすじだけを聞くとB級色が強い印象ですが、内容は意外にも正統派サメパニックとなっています。
「スーパーマーケットの中にサメ」という異色のシチュエーションだからこそ生まれる新たな恐怖描写は、大きなインパクトを見せてくれます。
「所詮B級」というレッテルを打ち壊した「MEG ザ・モンスター」
アイデア勝負の秀逸な作品たちが「パニックホラーとしてのサメ映画だってまだまだやれる」ということを示していく中で、サメ映画の「所詮B級ジャンルでしょ?」というイメージを決定的に打ち壊したのが、まさかの超大作「MEG ザ・モンスター」でしょう。
主演にハリウッドスターのジェイソン・ステイサムを迎え、他キャストにも名のある実力派が集結したこの作品。
そのストーリーにも「大昔の生態系が残る海底で、実在する巨大古代サメが生き残っていた」という、説得力のあるワンアイデアが盛り込まれています。
超巨大サメが怒涛の暴走を展開する壮大なスケール感も合わさって、サメ映画でありながらハリウッド大作としてしっかり楽しめます。
お笑いB級映画ではない、真面目なパニック映画としての「サメ映画」の注目度が高まっていることを決定づけた傑作です。
最後に
斬新なワンアイデアを加えることで、「ジョーズ」が築き上げた王道を辿りつつも新しい刺激を見せてきた現代のサメ映画。
どの作品も正統派なパニックホラーとして楽しめる良作ばかりです。
B級おバカ映画としてのサメ映画だけでなく、真面目にサメの恐怖を追求した作品にもあらためて注目してみてください。